オープンアクセス
すべての人にアクセスとチャンスを
本学では2019年にオープンアクセスポリシーを策定し、研究成果の公開によって情報アクセスの平等を実現し社会へ還元することを目指して取り組んでいます。
「すべての人にアクセスとチャンスを」
国連2030アジェンダを目指して掲げられたIFLA(国際図書館連盟)のスローガン
オープンアクセスとは
「オープンアクセス」とは、研究成果である論文等がインターネット上で公開され、経済的、技術的、法的な障壁なく誰でも自由に読めるようにすることです。オープンアクセスにより、情報アクセスの平等を実現し、さらに研究成果の共有と利用を進めることで社会への還元が期待できます。
オープンアクセスは国の政策として推進されており、公的な研究助成(科研費、JST、AMED等)においても、その成果をオープンアクセスにすることが求められています。
- 科学研究費助成事業「オープンアクセス」(日本学術振興会)
- 「オープンサイエンス方針」(国立研究開発法人科学技術振興機構 - JST)
- 日本の助成・研究機関におけるオープンアクセス方針(国立研究開発法人科学技術振興機構 - JST)(507.72 KB)
オープンアクセスの運動は、20世紀後半からの学術雑誌の価格高騰を背景に始まりました。世界各地の大学が機関リポジトリを設置して研究者のセルフアーカイブを支援しました(グリーン・オープンアクセス)。一方、2000年代中盤以降は商業出版社が APC(Article Processing Charge)支払い型のビジネスモデルを確立させ、オープンアクセスに積極的です(ゴールド・オープンアクセス)。
近年は、公的資金によって得られた研究成果に対して納税者や産業界が容易にアクセスできるようにすることを目的として、研究機関・政府機関・助成機関でオープンアクセスポリシーの策定が国際的に行われています。本学は2019年に策定しました。
オープンアクセスにするとよいこと
論文を広く世界へ公開することで、その著者にとって以下の利点があります。
- 論文が引用される可能性が向上
- 自分の論文をいつでも確認することが可能
- 分野を超えて交流できる可能性が向上
臨床の医療職にとっては、最新の研究成果(エビデンス)にアクセスしやすく、すぐに医療の改善に活かすことができます。
学生にとっては、学習や研究での先行研究のレビューを容易にします。特にデジタルネイティブ世代は即時性を求める傾向にあり、アクセスのしやすさが、その利用に影響します。
論文をオープンアクセスにするには
公開の手段として次の2つがあります。
■ グリーン・オープンアクセス
所属する大学等の機関リポジトリにおいて無償で公開すること
■ ゴールド・オープンアクセス
出版社や学協会等(出版者)のウェブサイトでオープンアクセス出版すること
本学のオープンアクセスポリシーは、SLIU Repositoryに研究成果を登録することにより、グリーン・オープンアクセスの実現を目指します。
■ 本学リポジトリにおけるセルフアーカイビング(グリーン・オープンアクセス)
本学では、聖路加国際大学学術情報リポジトリ(SLIU Repository)による公開が可能です。
SLIU Repositoryに登録された研究成果のデータは、登録申請者である教職員が退職等により本学に在籍しなくなった場合も引き続き保存、公開されます。「聖路加国際大学学術情報リポジトリ細則」で規定しています。
なお、著作権は本学に移転されることなく著作権者(著者や出版者など)に留保されます(「聖路加国際大学学術情報リポジトリ細則」第13条)。
【登録までの手順】
研究成果のデータ登録から公開までは以下の2つの手順があります。
A. 学術情報部から依頼する場合
本学のオープンアクセスポリシーが対象とする研究成果については、定期的に(年1回程度)、学術情報部が、Researchmap のデータをもとに登録申請の手続きを依頼いたします。時期と方法はリポジトリ担当者より個別にご案内いたします。
B. 教職員から自主的に申請する場合
本学教職員で希望する方は、随時、登録申請をすることができます。
この手順のうち、いずれの場合も、教職員は「共著者に公開への同意確認」「学術情報部への登録申請」を行います。
【登録申請の手続き】
教職員(登録申請者)は、まず必要に応じて「① 共著者に公開への同意確認」を行い、次に「② 学術情報部への登録申請」を行ってください。
① 共著者に公開への同意確認
著作権者が著者であり、共著論文の場合、登録申請者は、リポジトリの公開について、必ず共著者全員の同意を得る必要があります。「聖路加国際大学学術情報リポジトリ登録許諾書」をお送りください。
著作権が出版者に譲渡されている場合は、共著者への同意確認は義務ではありませんが、責任著者(corresponding author)の了解を得ておくことが望ましいです。
② 学術情報部への登録申請
登録申請者は、リポジトリ登録が許諾される適切な版(PDF等のデータ、あるいは紙原稿)に「学術情報リポジトリ登録申請書(研究成果) 」を付して、リポジトリ担当者に電子メール、あるいは直接持参して提出してください。
リポジトリへの登録が許諾される版は掲載誌によって異なり、「著者版」(図内A・B)と「出版者版」(図内C)があります。
● 著者版が公開可能な場合
登録申請者は該当する適切な原稿をリポジトリ担当者に提出してください。
著者版は、ここでは掲載誌へ投稿したときの初稿、つまり査読前の原稿(A)から、査読が終了し採択(accept)されたときの原稿である著者最終稿(B)までを指します。一般的に、出版者による最終校正やレイアウト調整等の手が加えられていないものです。
● 出版者版が公開可能な場合
登録申請者がリポジトリ担当者に出版者版を提出するか、リポジトリ担当者が出版者から入手します。
資料の散逸等を防ぐため、研究成果はできるだけ速やかに提出してください。出版者により公開禁止(embargo, エンバーゴ)期間が定められている場合には、リポジトリ担当者にて指定した日まで公開を保留する措置をとります。
提出する研究成果は、PDF、Microsoft Word 等、電子データでの提出が推奨されますが、現物や複写物等の紙原稿での提出も可能です。
【公開しない場合の手続き】
研究成果は、出版者の許諾や共著者の同意を得られない、オープンアクセスジャーナルで公開しており異なる版の公開を差し控えたいとき、また、他者の権利を侵害する内容が含まれていることや、データ改ざん等の研究不正が判明したときは、リポジトリで公開できません。
出版者がリポジトリでの公開を許諾していないことを学術情報部にて確認した場合は、非公開申請の手続きを代行いたします。このほか、非公開とする必要があると教職員が判断した場合、その理由を付して申請できます。
非公開の手続きは以下のとおりとします。
A. 学術情報部にて確認した場合
学術情報委員会に諮り同委員会の審査を経て、学術情報部運営会議で決定後、非公開の処理を行います。
B. 教職員が判断した場合
本学イントラネット上にある学術情報部のページより「学術情報リポジトリ非公開申請書 」をダウンロードして記入し提出してください。学術情報委員会の審査を経て、学術情報部運営会議で決定後、非公開の処理を行います。
【リポジトリ担当者】
学術情報部
arch-admin[at]slcn.ac.jp
03-5550-2251
■ オープンアクセス誌への投稿(ゴールド・オープンアクセス)
オープンアクセス誌とは、出版者が論文をオープンアクセスで公開している電子ジャーナルのことです。
オープンアクセス誌において、査読や編集などの出版コストは、従来のように読者が支払う購読料ではなく、著者が支払うAPC(Article Processing Charge)が充てられます。
商業出版社によるオープンアクセスには、通常の購読誌でありながら著者がAPCを支払ってオープンアクセスとすることが選択できるもの(ハイブリッド誌)、発行後一定のエンバーゴ期間を経てからオープンアクセスになるものなど、さまざまな方式があります。
【ハゲタカジャーナルに注意】
「ハゲタカジャーナル(predatory journal)」とは、「粗悪学術誌」「捕食ジャーナル」とも訳される、オープンアクセス誌のビジネスモデルを悪用した雑誌のことです。ハゲタカジャーナルの目的は、権威のある学術雑誌のように装うことで、著者である研究者から高額なAPCを騙し取ることです。
研究者を誘う手段として、権威のある学術雑誌に酷似した誌名にする、著名な研究者を編集者として偽る、電子メールで論文投稿や国際会議での基調講演を依頼する、などがあります。
ハゲタカジャーナルでは、査読がほとんど、あるいは全く行われないため、掲載論文の質が保証されません。安易に誘いにのって投稿すると、それが質の高い論文であっても、玉石混淆の他の論文と同類とみなされ、正当に評価されません。そればかりではなく、後で高額な投稿料を請求される場合があります。
オープンアクセスは研究者としての可能性を広げることにつながりますが、公開の場をどこに求めるかは十分に検討する必要があります。
【投稿先の選び方】
投稿したい学術雑誌が見つかったら、以下のようなことをチェックしてください。
信頼できる学術雑誌を選択するためのチェックリスト
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あなたや仲間の研究者は、その雑誌について知っていますか?
- その雑誌の論文を以前に読んだことがありますか
- 最新の論文をよく目にすることがありますか
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その出版社の連絡先はすぐに見つけられましたか?
- その雑誌のウェブサイトには、出版社名が明記されていますか
- 出版社とは、電子メール、電話や郵便で連絡がとれますか
- その雑誌では、どのように査読を行っているかが明らかですか?
- その雑誌の論文はあなたがよく使う文献データベース等に収録されていますか?
- その雑誌のウェブサイトには、手数料の内容と請求時期が明記されていますか?
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編集委員会は、設置されていますか?
- 編集委員について知っていますか
- 編集委員は、その雑誌について自身のウェブサイトに掲載していますか
- その雑誌がオープンアクセス誌である場合、Directory of Open Access Journals (DOAJ)に収録されていますか?
- その出版社は、次のような学術出版の協会や活動等に参加していますか?